東芝 TP-7340
雲にのりたい/恋のなごり
発売: 1969年8月
A1 雲にのりたい (黛ジュン)Ⓐ 🅳→11/13
A3 或る日突然 (トワ・エ・モワ)Ⓐ 🅸→11/13
A4 ミヨちゃん (ザ・ドリフターズ)Ⓑ
A5 港町ブルース (森進一)Ⓒ 🅼
A6 恋の奴隷 (奥村チヨ)Ⓑ 🅴
A7 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ)Ⓓ 🅹
B1 恋のなごり (小川知子)Ⓑ 🅵
B3 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ)Ⓔ 🅴→1/7
B4 粋なうわさ (ヒデとロザンナ)Ⓕ 🅶
B5 七色のしあわせ (ピンキーとキラーズ)Ⓒ 🅷
B6 時には母のない子のように (カルメン・マキ)Ⓔ 🅼→1/7
B7 みんな夢の中 (高田恭子)Ⓐ 🅴→11/13
演奏: アート・ポップス・オーケストラ
編曲: ミッチー・シモンⒶ、川口真Ⓑ、柳田六合雄Ⓒ、荒木圭男Ⓓ、横内章次Ⓔ、筒美京平Ⓕ
定価: 1,500円
東芝の歌無歌謡盤程、クレジット関係で雑多な印象を与えるものはない。ゴールデン・サウンズという「主軸」があるにも関わらず、競合したがるディレクターが独自の切り札を提示しまくり、結果的に市場が賑やかになるのはいいけれど、買う側は焦点を絞りづらくなる。そんな中でも、一層謎に満ちているのがこの「アート・ポップス・オーケストラ」名義を冠された盤だ。聴き進むと、何がどう理不尽かが手に取るように解るが、後期のブルーナイト・オールスターズ盤みたいに「編曲者未記載」ではなく、それぞれの曲にクレジットが明記されているため、出所を容易に推測できるというのが、実にマニア軽視というか、要するに「手口が荒い」。雲にのりたいと言っといて、軽率に雲のようなものにモデルを乗せたジャケットが、下心をはっきりさせる。赤いドレスの向う側まで、じっくり目を凝らして見てごらんと言わんばかりに…ええ、こっちはそれ以上に探究心満々ですから。
冒頭の3曲とラストの「みんな夢の中」は、昨年11月13日紹介のクイン・ノート名義のアルバム『或る日突然』と同じヴァージョン。B面3曲目と6曲目が、ブルー・ドリーマーズ名義の『さすらい人の子守唄』から持ってこられたもので、既に取り上げた盤と同じテイクと判明したのはこの2パターンのみだが、他の収録曲の多くも憶測するのは容易で、柳田六合雄アレンジの2曲は8月発売のファイブ・サンズ盤『天使のスキャット』(TP-7336)より。「粋なうわさ」は筒美京平自らのディレクションとプレイによる、7月発売の『ヒット・ピアノ・タッチ』(TP-7322)より。この1曲が全体の流れの中で突出しすぎているけれど、京平先生のプレイをやっとここで語る機会に恵まれてよかった、という安堵感もある(汗)。オリジナルは激レアですからね。あり得ないため息を挿入したヤバいアレンジの「君は心の妻だから」は恐らく、ミッドナイト・ウィスパーズ名義の盤のいずれかが初出と思われる。
残すは川口真アレンジの4曲なのだが、いずれも自社曲であるそれらの内、「ミヨちゃん」と「恋の奴隷」がどう聴いても、オリジナルのオケを流用してメロディを重ねたものなのだ。同様のコンセプトでまとめた盤の存在が確認しづらいので、本盤のための録り下ろしだろうか。前者はオリジナルそのままのタッチを生かした演奏に仕上げられているが(しかもコーラス入り!純ドリフグルーヴである)、後者のサックスとギターの演奏は全体に馴染んでない感がある。「夜明けのスキャット」の川口真アレンジ盤は、貴重と言えば貴重だが、自社盤だけで同曲は何ヴァージョン作られたのだろうか。
誰がこういう路線で出そうと決めたか明らかでないけれど、美味しいとこどりとしてはなかなかいい線いっているアルバムだと思う。この名義では案の定、これが最初で最後のリリースである。色々あったんだろうな…