黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は西城秀樹さんの誕生日なので

東宝  AX-2009

最新歌謡ヒット

発売: 1973年3月

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ジャケット

A1 中学三年生 (森昌子) 🅷

A2 あなたへの愛 (沢田研二) 🅴

A3 女のねがい (宮史郎とぴんからトリオ) 🅸

A4 ふたりの日曜日 (天地真理) 🅶 

A5 あなたが帰る時 (三善英史) 🅳

A6 雨のヨコハマ (欧陽菲菲) 🅳

A7 そして神戸 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅳

B1 女の子なんだもん (麻丘めぐみ) 🅶

B2 あなたにありがとう (和田アキ子) 🅳

B3 あなたの灯 (五木ひろし) 🅵

B4 早春の港 (南沙織) 🅷

B5 じんじんさせて (山本リンダ) 🅵

B6 雨やどり (千葉紘子) 🅱

B7 チャンスは一度 (西城秀樹)

 

演奏: ミラクル・サウンズ・オーケストラ

編曲: 福井利雄

定価: 1,500円

 

昨年「歌謡フリー火曜日」を設けて何が一番悔しかったって、秀樹の誕生日に火曜日がぶつかってしまったことなんですよ…というわけで颯爽とリベンジいたします。めちゃ取り上げられる頻度が高い曲が揃っている73年春のヒット集ですが、秀樹のサード・シングル「チャンスは一度」が登場するのは今回が初めて。既にブレイク直前の段階に差し掛かってはいたけれど、発売3ヶ月目での選曲はちょい遅れたという感も。ともあれ、ここからは歌無歌謡でも常連の存在となるわけである。ただ、名曲揃いの割に突き抜けて凄いヴァージョンがないというのも、秀樹の歌手としての個性の強さに起因するのかもしれない…やっぱ絶対的な存在なんですよね。クラウン盤「ラスト・シーン」のような、意表を突くアプローチをしたヴァージョンが一番好きなんですよ。

アルバムそのものは、いつも通り安定のミラクル・サウンズで快調に飛ばすのだけど、73年になると周りが強烈な個性を出し始める故、むしろ無色すぎて突出点を見つけるのが難しい。淡々と演奏される「女のねがい」に顔を出すおしとやかなフルートや、地味に暴れるベースなど、耳を捉える部分もあるけれど、「女の子なんだもん」の鍵ハモはお茶目さが希薄で、どうしても『さわやかなヒット・メロディー』版に耳が向かってしまう。「あなたの灯」も、ツゥイン・ギターズ版を聴きすぎたせいでだるさしか感じないし、かと思うと「早春の港」には効果音を大胆に起用。問題の間奏のフルートソロにまで、大音量で波の音を被せており、別にひどい演奏でもないのにそりゃないよって思う…ミラクル・サウンズ盤としては中途半端な印象が残る1枚だけど、この先には意表を突く急展開が待っている。