東宝 AR-1003
YOUNG! YOUNG! 最新歌謡曲ヒット16
発売: 1972年2月
A2 雨のバラード (湯原昌幸) 🅵
A3 お祭りの夜 (小柳ルミ子) 🅹
A4 長崎から船に乗って (五木ひろし) 🅹
A5 誰も知らない (伊東ゆかり) 🅸
A6 潮風のメロディー (南沙織) 🅵
A7 雨の御堂筋 (欧陽菲菲) 🅸
A8 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅹
B2 涙から明日へ (堺正章) 🅳
B3 ノアの箱舟 (平山三紀) 🅱
B4 ポーリュシカ・ポーレ (仲雅美) 🅵
B5 火の女 (森進一) 🅳
B6 遠くはなれて子守唄 (白川奈美) 🅵
B7 おもいでの長崎 (いしだあゆみ) 🅷
B8 さよならをもう一度 (尾崎紀世彦) 🅼
演奏: オーケストラ・ルミエール・ブルー
編曲: 無記名
定価: 1,500円
ワーナー・ビートニックスにも、ブルーナイト・オールスターズにも、クリスタル・サウンズにも「創設以前期」があったのと同じく、東宝のミラクル・サウンズ・オーケストラにもありました。よくわからない名義だし、アレンジャークレジットが記されていないけど、鮮やかに予想を裏切る音が飛び出してくる。あの福井利雄のミラクルサウンズじゃない…オーケストラってイメージの音でさえない…
トップの「愛する人はひとり」、筒美京平曲の中でも競合ヴァージョンが多い曲だけど、一際ユニークな響き。イントロからティンパニーが妙な音を響かせまくっているし、主旋律に絡むブラスの響きが、一言でいえばフリーキー。歌無歌謡の中でも、敢えて言うなら最もザッパ的というか、不思議なイメージを醸し出す。ギターも相当ハードな音で支えているし、ワーナー・ビートニックスと共通する音と定義したくもない。東宝のレコードでこんな音を聴くなんてと、爽やかに仰天させられるオープニング。続く「雨のバラード」も、淡々とした演奏がかえって妙味を感じさせるし、歌謡度数の高い曲も派手に盛り上げるというよりは、一種独特の味付けをしている。かと思えば「潮風のメロディー」はかなりテンポを上げていながら、爽快に飛ばしているし。「雨の御堂筋」、イントロに全然違う曲を持ってきててずるい!これこそ正当なベンチャーズ・リスペクトなのだろうか。最後のAメロの各楽器のバランスの取り方とか、相当マッドだし。この線だと「ポーリュシカ・ポーレ」もめちゃぶっ壊してるかなと思いきや、それほどでもなかった。
一体誰が黒幕なのだろう、ここまでやっちゃった歌無盤の。ただ、やはり試行錯誤の一環だったのか、ミラクル・サウンズにこの路線を継承しなかったのも納得。実験作だと思って聴きたい一作。このジャケ、マシュー・スウィートの『ガールフレンド』に20年先んじている!元ネタのチューズデイ・ウェルドの写真を参考にでもしたのだろうか…