黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

安井かずみさんの誕生日は1月12日

東宝 AR-1003

YOUNG! YOUNG! 最新歌謡曲ヒット16

発売: 1972年2月

ジャケット

A1 愛する人はひとり (尾崎紀世彦) 🅹

A2 雨のバラード (湯原昌幸) 🅵

A3 お祭りの夜 (小柳ルミ子) 🅹

A4 長崎から船に乗って (五木ひろし) 🅹

A5 誰も知らない (伊東ゆかり) 🅸

A6 潮風のメロディー (南沙織) 🅵

A7 雨の御堂筋 (欧陽菲菲) 🅸

A8 悪魔がにくい (平田隆夫とセルスターズ) 🅹

B1 忘れな草をあなたに (菅原洋一) 🅴

B2 涙から明日へ (堺正章) 🅳

B3 ノアの箱舟 (平山三紀) 🅱

B4 ポーリュシカ・ポーレ (仲雅美) 🅵

B5 火の女 (森進一) 🅳

B6 遠くはなれて子守唄 (白川奈美) 🅵

B7 おもいでの長崎 (いしだあゆみ) 🅷

B8 さよならをもう一度 (尾崎紀世彦) 🅼

 

演奏: オーケストラ・ルミエール・ブルー

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

ワーナー・ビートニックスにも、ブルーナイト・オールスターズにも、クリスタル・サウンズにも「創設以前期」があったのと同じく、東宝のミラクル・サウンズ・オーケストラにもありました。よくわからない名義だし、アレンジャークレジットが記されていないけど、鮮やかに予想を裏切る音が飛び出してくる。あの福井利雄のミラクルサウンズじゃない…オーケストラってイメージの音でさえない…

トップの愛する人はひとり」筒美京平曲の中でも競合ヴァージョンが多い曲だけど、一際ユニークな響き。イントロからティンパニーが妙な音を響かせまくっているし、主旋律に絡むブラスの響きが、一言でいえばフリーキー。歌無歌謡の中でも、敢えて言うなら最もザッパ的というか、不思議なイメージを醸し出す。ギターも相当ハードな音で支えているし、ワーナー・ビートニックスと共通する音と定義したくもない。東宝のレコードでこんな音を聴くなんてと、爽やかに仰天させられるオープニング。続く「雨のバラード」も、淡々とした演奏がかえって妙味を感じさせるし、歌謡度数の高い曲も派手に盛り上げるというよりは、一種独特の味付けをしている。かと思えば「潮風のメロディー」はかなりテンポを上げていながら、爽快に飛ばしているし。「雨の御堂筋」、イントロに全然違う曲を持ってきててずるい!これこそ正当なベンチャーズ・リスペクトなのだろうか。最後のAメロの各楽器のバランスの取り方とか、相当マッドだし。この線だとポーリュシカ・ポーレもめちゃぶっ壊してるかなと思いきや、それほどでもなかった。

一体誰が黒幕なのだろう、ここまでやっちゃった歌無盤の。ただ、やはり試行錯誤の一環だったのか、ミラクル・サウンズにこの路線を継承しなかったのも納得。実験作だと思って聴きたい一作。このジャケ、マシュー・スウィート『ガールフレンド』に20年先んじている!元ネタのチューズデイ・ウェルドの写真を参考にでもしたのだろうか…