アトランティック L-6025A
アメリカ/華麗なるポップス・ベスト・ヒット20
発売: 1971年10月
A1 アメリカ (サイモン&ガーファンクル)
A2 雨のフィーリング (ザ・フォーチュンズ)
A3 パペット・マン (トム・ジョーンズ)
A4 雨の日と月曜日は (カーペンターズ) 🅱
A5 夜のメロディ (アダモ)
A6 イッツ・トゥ・レイト (キャロル・キング) 🅲
A7 さすらいのギター (ザ・ベンチャーズ) 🅸
A8 チピチピ天国 (ミドル・オブ・ザ・ロード)
A9 ワイルド・ホース (ザ・ローリング・ストーンズ)
A10 ポーリュシカ・ポーレ (赤軍合唱団)☆☆ 🅰→7/4
B1 フレンズ (エルトン・ジョン) 🅱
B2 スウィート・ヒッチハイカー (クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル) 🅱
B3 嘆きのインディアン (レイダーズ)
B4 バタフライ (ダニエル・ジェラール)☆ 🅱
B5 恋のかけひき (ハミルトン、ジョー・フランク&レイノルズ)☆ 🅲
B6 メロディ・フェア (ビー・ジーズ)☆ 🅴
B7 太陽は燃えている (エンゲルベルト・フンパーディンク)☆ 🅱
B8 サマー・クリエイション (ジョーン・シェパード)☆☆🅰→10/25
B9 きみの友だち (ジェームス・テイラー)☆☆
B10 ライフ (エルヴィス・プレスリー)☆☆
演奏: ワーナー・ビートニックス
定価: 1,800円
今回も登場するワーナー・ビートニックスのアルバムですが、数少なく残された洋楽を取り上げた盤の1枚。とんでもない高値をつけているアルバムも中にはあって、全貌を知るのは茨の道ですが、運よく手に入ったこの盤もかなりのディープな世界。当時のワーナーのラインナップを考えると、自社アーティストの強力曲が多く取り上げられてるのかと思いきや、ストーンズのA9と、一応シングルヒット的にはJTのヴァージョンの方が馴染み深かったB9の2曲に抑えられている。ZEP、パープル、EL&P、クリムゾンあたりを歌無ヴァージョンに料理する度胸はまだなかったのかな。逆に言うと、現在から想像できないほど洋楽マーケットが広大だったのがわかる。
表題曲が「アメリカ」ということで、同じアトランティックからリリースされたイエスのシングルに焦点を当てたのかと思いきや、こちらの方が11ヶ月早いリリースであり、当時はなぜかS&Gのオリジナル・ヴァージョンがオリコン15位に達するリバイバル・ヒットになっていた。それを促したのは、何でしょう…やっぱり「家をつくるなら」のせいか(汗)。マイホームを持つことと、アメリカン・ドリームを探すこと。それらが心身一体となっていた70年代初期の幻って一体。今思えば、1ドル360円とか、そんな時代でしたよ…
歌謡曲を演るワーナー・ビートニックスのイメージに縛られていたら、いい意味で火傷をする過激な1枚である。まず、大半のアレンジにクニ河内を迎えているのが目ぼしい。68年に発表された『ハプニング・ポップス』の線上にあるヤバいアレンジが随所で展開されているのだ。まったりクラシカルにアレンジされた「アメリカ」にうっとりしていたら、ファンシーな「雨のフィーリング」へ。ちょっぴり無茶気味のリコーダーのデュオが、雨に流される乙女の純情を描き切っている。「雨の日と月曜日は」はコードを簡素化しつつも、こだまたかし(恐らく)の高周波口笛を加えてうきうき気分へ。ロジャニコ至上主義者には文句言われそうだが、なかなかのナイス料理だし、「イッツ・トゥ・レイト」ではガチなセクション系演奏に乗せてなんと三味線が。この発想は普通のアレンジャーでは無理だろう。「フレンズ」は尺八をフィーチャーしてるし、山内さんさえいれば完璧だったのにな。「さすらいのギター」も、歌謡側からのアプローチと一味違い、猫の足や鉄の爪が出てきそう(爆)。個人的には英国のPanda Peepleが歌う究極のアホヴァージョンでなじみ深い「チピチピ天国」も笛全開で心うきうき。「パペット・マン」や「夜のメロディ」は、これらを下敷きにした歌謡曲の存在を浮き彫りにしてくれるし、逆に「嘆きのインディアン」は待っている余裕も与えない過激なロックアレンジ。執拗に打ち鳴らされるキハーダに脳天をかち割られる。かと思えば「ワイルド・ホース」のエレガントなアレンジは安堵の一瞬だ。こういうのもありでいいじゃないですか、ストーンズ・ファンの皆様。
後半では宮川泰御大のより王道ながらカラフルなアレンジも楽しめて、まさに一粒で二度美味しい。この洋楽シリーズ、もっと出して欲しかったな。