黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

浜恵子さんの誕生日は3月6日

ミノルフォン KC-22

ギターが奏でる愛のこころ 愛して愛して

発売: 1969年9月

ジャケット

A1 愛して愛して (伊東ゆかり) 🅹

A2 恋の奴隷 (奥村チヨ) 🅶

A3 恋の花うらない (ビリー・バンバン) 🅵

A4 青空にとびだせ (ピンキーとキラーズ) 🅱

A5 恋のバンバン (山本リンダ)

A6 粋なうわさ (ヒデとロザンナ) 🅸

A7 さみしの心 (金 玉花)

B1 涙のとなり (千昌夫) 🅲

B2 雲にのりたい (黛ジュン) 🅸

B3 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 🅺

B4 大空の彼方 (加山雄三) 🅶

B5 夏のおわり (浜恵子)

B6 渚への招待 (加賀ひとみ)

B7 ローマの灯 (中村晃子)

 

演奏: 益田のぼるとパーフェクト・サウンド・グループ

編曲: 福山峯夫

定価: 1,500円

 

さぁ、遂に大詰めまであと一歩。目標を明白に設定した分、そこを越えようとは思いませんが、明日で一区切りつけるのは絶対的真実ですので、もうちょっとだけお付き合い下さい。愛して愛して。

ブルーナイト・オールスターズ以前のミノルフォンを特徴付ける楽器シリーズの1枚。69年に集中的に出されたけれど、もっとこんな感じで続いて欲しかったという気もする。あらゆる楽器に対して有効だと思うし、伝え方としてはわかりやすい。意外なものがささやいたり、咽び泣いたり。いいコンセプトだ。ここでは通常のギター(エレキ、アコギ各種。12弦は別途1枚作られたので、ここでは省かれている)でそれを試みている。編曲・福山峯夫のクレジットが、否応にもクラウン色を誘き出すけれど、サウンド的にはミノルフォン独自の色を既に獲得している。クラウンとテイチクの中間的なカラーとでも言うべきか、そこまで色気を強烈に出していないのに、妙に耳に残る。冒頭の「愛して愛して」から既に全開で、チージーなオルガンとハーモニカ(鍵盤ではない)がせこい場末感を演出しながら、妙にノリがいい、絶妙のリズム感覚が伝わってくる。ミノルフォンの歌謡レコードの何に魅せられたって、恐らくこの「絶妙のリズム感覚」が脈打っていたことじゃないかな。歌のバックだと、それなりに別のはりきり感を出さなきゃいけないし。

そんなミノルフォンの「意外な自社推し」曲が、この盤には目白押し。他社曲も含めて、女性歌手の曲が中心だし、この選曲には心躍る。「恋のバンバン」は、山本リンダの曲の中でもノベルティ色が濃いダンス・ナンバーで、面白要素を控えめにしながらグルーヴィさ倍増。「青空にとび出せ」からこの曲への流れは、この盤でも圧巻だ。「さみしの心」の金 玉花は、当時早々とグローバル感覚を全開していた遠藤実が韓国から誘致した歌姫。ナイスなソウル感覚(都市名に非ず)が全開したいい曲で、ここでもなかなかの好解釈。さすがに実先生もこれじゃやばいと悟ったのか、続く2枚のシングルでの歌手名表記は「キム・玉花」(ギョッカ)に変更になっている。関取花みたいな読み方で読むと、放送局出禁になりかねないからね(爆)。

B面では浜恵子の穏やかな「夏のおわり」が安息の場所を作り出す。この人に関しては、思い入れ半端ないので別のチャンスにじっくりと…必聴曲が沢山ありますので。特に「恵子の電話」は大傑作。『GROOVIN’ 昭和』に入れてほしかったな…中堅の域に達していた加賀ひとみが奥村チヨの領域に挑んだ「渚への招待」も貴重な選曲。こちらは近年、数回CD化もされているので、再評価が進んだと言えるだろう。歌無化されると、本当にチヨの曲かと思ってしまう…

ミノルフォンに対する思い入れ故、自社推し曲を強烈に推してしまったけれど、それ以外もいい感じで流れていく。「粋なうわさ」も、せこくはあるけれど決してこけていないし、ギターの響きも魅力的にまとまっている。あれだけ欲していた60年代の中村晃子の曲が、ラストにさりげなく出てきて、ムーディな終幕をもたらしている。

ラストに近づくにつれて、半端なく文章量が増えていき、昨年の今頃書いていたエントリの内容の薄さを恥じたりもするけれど…思い入れが強くなるとこうなるのも仕方ないですよ。明日の最終回は、半端ない大容量になりそうです…曲数的にも最多タイだし。最初のエントリと同曲数。と言うか、そこに帰結する内容をお約束します…