黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

増田恵子さんの誕生日は9月2日

ミノルフォン  KC-5011~2

最新ヒット歌謡ベスト30

発売: 1977年7月

ジャケット

A1 悲恋白書 (岩崎宏美) 🅲

A2 フィーリング (ハイ・ファイ・セット) 🅷

A3 沈黙 (野口五郎) 🅲

A4 青春時代 (森田公一とトップギャラン) 🅵→2/7

A5 失恋レストラン (清水健太郎) 🅲→2/7

A6 初恋草紙 (山口百恵) 🅲

A7 Hi-Hi-Hi (あおい輝彦) 🅱

A8 私のいい人 (内藤やす子) 🅳

B1 カルメン'77 (ピンク・レディー) 🅵→2/7

B2 夢先案内人 (山口百恵) 🅴

B3 帰らない (清水健太郎) 🅶

B4 ブーメラン・ストリート (西城秀樹)

B5 風をくらって (研ナオコ) 🅱

B6 むさしの詩人 (野口五郎) 🅲

B7 星の砂 (小柳ルミ子) 🅴

C1 恋歌 (八代亜紀) 🅳

C2 昔の名前で出ています (小林旭) 🅴

C3 風の子守唄 (五木ひろし) 🅲

C4 おゆき (内藤国雄) 🅵

C5 小雨の下宿屋 (森昌子)

C6 北国の春 (千昌夫) 🅷

C7 おんな港町 (八代亜紀) 🅵

C8 途中駅 (五木ひろし)

D1 津軽海峡冬景色 (石川さゆり) 🅷→2/7

D2 北へ (小林旭) 🅱

D3 港のまつり (森昌子) 🅱

D4 線香花火 (さだまさし) 🅱

D5 思いで… (因幡晃) 🅲

D6 時 (小椋佳) 🅱

D7 ラスト・シーン (西城秀樹) 🅱

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ&ストリングス

編曲: 無記名

定価: 2,000円

 

実は昨年数回した箱買いの中に、ミノルフォンブルーナイト・オールスターズの盤が大量に入っていて(しかも同じアルバムが複数枚入っていたり。そんな盤の多くは、4月と6月に行った歌無歌謡祭り「黄昏みゅうぢっくばあ」でお客様にあげたり、有意義に使わせていただきました…汗)、小梅ちゃんジャケット好きとしては黙っちゃいられなかったのだけど、1枚もの収録曲の多くが2枚組とダブっていたりして、必然的によけてしまっていた。音楽的なメリットを語るという主題で続けているブログゆえ、そうなるのもしょうがない。本当は名残惜しいんだけどね。

で、よけてしまっていた盤の中に2枚組が一つだけ入っていたのをてっきり忘れていたので、ここで救済。そのついでに、悲しい仕打ちを受けてしまった小梅ちゃん盤4枚のおさらいもしておきたいと思う。何せ、ジャケットだけでも見せたい気持ちってあるじゃないですか。このシリーズなら当然の如く(汗)。

小梅ちゃんシリーズ4枚

『最新ヒット歌謡』(KC-106、左上) 77年3月発売。全14曲。「たえこMY LOVE」(吉田拓郎)を除く全曲、KC-5009~10(昨年8月23日)及び5011~12(本盤)と重複。

『最新ヒット歌謡』(KC-111、右上) 77年6月発売。全14曲。「マイ・ピュア・レディ」(尾崎亜美)を除く全曲、本盤と重複。

『最新ヒット歌謡』(KC-131、左下) 77年10月発売。全14曲。「熱帯魚」(岩崎宏美)を除く全曲、KC-5013~14(2月7日)と重複。

『’78最新ヒット歌謡②』(KC-139、右下) 78年6月発売。全14曲。「昭和たずねびと」(石原裕次郎)を除く全曲、KC-5016~17(3月13日)と重複。

 

ご覧の通り、見事なまでのロマンチシズム!特にKC-139は小梅ちゃんイズム全開という感じですよね。ちなみにアルバムタイトルは表ジャケットのどこかに、さりげなく書かれており(この画像じゃ分かりづらいですが、探してみて下さい)、そのあたりまで統一した美学を感じさせます。そして、どの盤にも2枚組とダブっていない曲が、最低1曲入っているのも心憎い(汗)。音源マニア心をもくすぐってくれるのです。

さて、この盤に話題を移しますか。最早この頃になると、クラウンかミノルフォンかという選択肢しかなくなるわけで、時に大胆な方向に舵を切りがちなクラウンに比べると、あくまでもベーシックに忠実に、雰囲気作りに徹したサウンド作りが全編を貫く。安心のブルーナイト・ブランドとしか言えないわけで、そのとっかかりとして小梅ちゃんジャケットが有効だったと。この盤みたいに、こんな風に純粋な眼差しで見つめられると、抵抗できなくなっちゃいますよね。「夢先案内人」一つとっても、クラウン盤のツンデレなフルート演奏が恋しくなりはするけれど、こちらの無表情な響きがジャケットのイメージにぴったり。カルメン’77」では乙女チックなフルートに主旋律を任せつつ、絶えず打ち鳴らされるカスタネットに「夢で逢えたら」の影をちょっぴり感じてしまう。全体のサウンドピンク・レディー盤に限りなく近づけているのも気合充分。

勢いで駆け抜ける1枚目に対して、2枚目は慎重に夜のムードで寄り添う。オリジナルのオケを流用した自社曲が、響き的に抜きん出てしまうのは仕方ないけれど。まだまだメガヒットの兆しが見えてこない段階で取り上げられた北国の春は、フルートで爽やかに演奏されており、まさに初々しい風景という感じ。2年後のブルーナイトのアルバムでは、このヴァージョンはリサイクルされず、オリジナルのオケはそのまま、主旋律が好夫風のギター演奏に差し替えられている(2番はヴァイブからサックスに変更)。成熟を経たという感じだろうか。音の方も、そっちの方が遥かにバランスを整えられたという印象。

演歌からフォークを経由して、たどり着いた終幕が「ラスト・シーン」。アダルトに落ち着いた表情でアルバムを締めくくる。クラウンのリコーダー・ヴァージョンもいいけれど、これもまた秋らしくて完璧な幕引きだ。アルバムの最後くらいはちゃんと演出してほしいものですよね。さて、小梅ちゃんジャケット。実はまだ語ってないものが最低2枚はあります…コンプの道は厳しいのですが、やっぱその位は極めておきたいところ。