黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

世を偲ぶ仮の姿…とはこちらなのか

コロムビア HS-10013

恋人/レキント・サウンズ

発売: 1970年2月

ジャケット

A1 恋人 (森山良子) 🅼

A2 白い色は恋人の色 (ベッツイ&クリス) 🅺

A3 夜と朝のあいだに (ピーター) 🅵

A4 真夜中のギター (千賀かほる) 🅲

A5 おんな道 (浜真二) 🅱

A6 恋人の讃歌 (ピンキーとキラーズ) 🅲

B1 ひとり寝の子守唄 (加藤登紀子) 🅳

B2 別れのサンバ (長谷川きよし) 🅴

B3 私が死んだら (弘田三枝子) 🅺

B4 朝陽のまえに (はしだのりひことシューベルツ) 🅱

B5 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅻

B6 喧嘩のあとでくちづけを (いしだあゆみ) 🅹

 

演奏: エディ・ハートとレキント・サウンズ

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

歌無歌謡に特化したシリーズとして始まったコロムビアHS品番。かなり実験的な路線に打って出たりもしていたが、従来の邦楽部制作の歌無盤と違った洋楽的アプローチは、例え同じ曲を取り上げようが盤によって異なった魅力を編み出し、地味にマニアそそりのシリーズになった。初期の盤をチェックすると、ジャケット内に以前のリリースがしっかり告知されているところも、一過性が命の歌無歌謡アルバムと一味違うし、歌入りレコードの販売促進にも繋がる効果もあったようだ。

その第一回発売に選ばれたのがエディ・ハートなるギタリストのアルバム。ちょいエロなジャケットで探してる人も多いアルバムだが、手堅い選曲を包み込むその音の紡ぎ手の正体は…まぁ当時は誰も知る由なかったと思われますが、従来ユニオンに「エディ・プロコフスキー」名義で大量にレコードを残していたのと同じ人だろうという憶測は容易につくんですよね。即ち、あの方です(爆)。その前にもYS品番で1枚アルバムが出ているので、今日紹介するのが3枚目のアルバムということになる。

なぜかアレンジャーのクレジットがないが、洋楽度高めの小粋なサウンドを手堅いギター・プレイで引率している。これもまた余裕でちょちょいの仕事だったと思われるけれど、所々技量全開のプレイを挟み込みながら、本来の姿でのレコードほど強烈な個性を刻印せず、ロマンティックな雰囲気作りに徹している。8日前に紹介したアルバムと重なっている2曲を比較してみても、こちらの方は肩に力を入れすぎず、寧ろ乙女度はこっちの方が高いのでは。「白い色は恋人の色」で突然歌い出す天使の声とか、場末色の強いギター盤では決して聴けないものだ。「真夜中のギター」も、キングの『フォークの世界』に近い感触になっていてなかなかの出来。というか、この曲の歌無盤、知る限り好夫盤しかないではないか(えっ)。

残念なのは、いい感じで進んでいるのに、B面の数曲が飛びまくりで全く使えないこと。期待の「別れのサンバ」もまともに聴けなくなっているし。ジャンクハンティングの切ないさだめである…「恋人の讃歌」が上出来なので期待したんだけどね…目に見えるダメージのせいでプレイ不可と認定した盤を既に数枚避けてあるのだけど、それらも引っ張り出した方がいいのだろうか…