黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

寺尾聰さんの誕生日は5月18日

CBSソニー 25KH-1002 (カセット)

最新ヒット歌謡 ベスト22

発売: 1981年

参考画像

A1 夏の扉 (松田聖子)

A2 ブギ浮ぎI LOVE YOU (田原俊彦)

A3 出航 (寺尾聰)

A4 お嫁サンバ (郷ひろみ)

A5 I’m A Woman (八神純子)

A6 恋待草 (岩崎宏美)

A7 ルビーの指環 (寺尾聰) 🅳

A8 E気持 (沖田浩之)

A9 ヨコハマ・チーク (近藤真彦)

A10 シャドー・シティ (寺尾聰) 🅱

A11 街角トワイライト (シャネルズ)

B1 リトルガール (西城秀樹)

B2 17才 (河合奈保子)

B3 ツッパリHigh School Rock’n’Roll [登校編] (T.C.R.横浜銀蝿R.S.)

B4 春咲小紅 (矢野顕子) 🅱

B5 スローなブギにしてくれ (南佳孝) 🅱

B6 奥飛騨慕情 (竜鉄也)

B7 驛舎 (さだまさし)

B8 ふたりぐらし (川中美幸)

B9 港・ひとり唄 (五木ひろし)

B10 シンデレラサマー (石川優子)

B11 ペガサスの朝 (五十嵐浩晃)

 

演奏: クリスタル・サウンズ・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 2,500円

 

昨日もクリスタル・サウンズのジャケ写の罪深さについて愚痴りまくってしまいましたが(汗)、その路線は「オーケストラ」を名義に追加してからの80年代にもしっかり続いていました。いいじゃん、さわやかで真夏感覚が満開で…とか言いたいけれど、見る人はほんと目を凝らしてみますからね。このモデルが着てる水着(ワンピースではあるが)なんて特にやばい。今のグラビアアイドルでさえこれは着ないでしょ…つーわけで、せっせと自粛しますね(自滅)。

クリスタル・サウンズのカセットが手許にきたのはこれで2つ目で、まず1月3日紹介した『最新ヒット歌謡ベスト18』に4曲追加した『最新ヒット歌謡ベスト22』(25KH-850)が手に入った。あまりの詰め込み過ぎに盤の方ではまともな音質で聴けると言い難かった「さよならの向う側」が、もうちょっとましな音でという期待感があったが、生憎それなりの再生システムが手許になく(涙)、ただ単に曲を増やしたのみ。「ビューティフル・エネルギー」が有り難かったが。拡張版といえども両面で88分強あり、CD1枚に入りきらない。

その翌年出たのがこのアルバムで、恐らくレコードの方も18曲収録で発売されていると思われるが、そこまで調査できていない。80年代となると、発売点数的にボルテージが落ちているので、相対的に調査熱が下がるわけ…でも、出てるものが出てると判ると、やはり掴むわけで。この場合は信頼のブランドとしてのクリスタルを追いかけている故です、当然。ジャケットはおまけみたいなものでしかないです。カセットとなれば余計。

「初めにカラオケありき」を前提とした、オリジナルに近いフルコーラス演奏とはいえ、妙に勢いを追加している感もあり、自社曲にも関わらず夏の扉から既に爆走。メロを奏でる派手なシンセは雰囲気作りどころではなく、聖子版を聴いても決して感じなかった、この曲とリメインズ「ドント・ルック・バック」を結ぶ線を露呈しているのだ(まさか)。飛ぶ鳥を落とす勢いだった寺尾聰の3大ヒットシングルは、全てA面に散らされており、いずれの曲もフルートに何らかのエフェクターを通した、それほど渋さを感じさせない音で演奏されているのが面白い。前作で「さよならの向う側」を力演したお嬢さん(?)がたどり着いた境地なのだろうか?この不思議な感覚が意外とアーバンだ。高音のかすれ具合とかが露呈すると、妙な快感がもたらされる。それにしてもルビーの指環岩崎宏美「恋待草」の次に持ってくるのも確信犯だなぁ。ヒロくんの「E気持」にフィーチャーされている合いの手とか、歌が抜かれるとおかしな目立ち方が露呈する「ツッパリHigh School~」のコーラスとか、妙な方向に揺れる展開もいくつか。

B面は「作る側」に転じた水谷公生作品2曲からスタート、「ツッパリ~」を挟んで期待度MAXの「春咲小紅」は、意外と演奏の方がガチな取り組みぶりで驚き。サックスで奏でられるメロディーには避けられない場末感が。「スローなブギにしてくれ」を経て、一気に演歌の世界へと落とす。演奏の再現という点ではスタンスを変えてはいないけど、この落とし方は80年代になるとなんか悲しいとしか言えないよね。奥飛騨慕情」のフルート、寺尾聰の3曲を吹いた人よりはずっと大人の音を出している(汗)。最後の最後にもうちょっとアーバンに揺れて、一件落着。このソプラノサックスの音こそが、目一杯のアーバン要素の再現だったのかもしれない。ケニー・G天下が迫るまで、あと数年。

時期的に「君は天然色」が入ってもいいかなという選曲だが、慎重にいったんでしょうね。聴きたかったけれど。