黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

One More Time 追悼…もんたよしのり(門田頼命)さん

LIBERAL LGC-1670A (カセット)

ヒット歌謡スペシャ

発売: 1980年

ジャケット+テープ

A1 順子 (長渕剛) 🅳

A2 トゥナイト (シャネルズ) 🅲

A3 Yes・No (オフコース) 🅴

A4 いなせなロコモーション (サザンオールスターズ)

A5 男のウ#スキー (山崎ハコ)

A6 ダンシング・オールナイト (もんた&ブラザーズ) 🅵

A7 恋の綱わたり (中村晃子) 🅲

B1 狂った果実 (アリス) 🅲

B2 涼風 (岩崎良美)

B3 RIDE ON TIME (山下達郎) 🅳

B4 夜明けのタンゴ (松坂慶子) 🅱

B5 あの娘といい気分 (吉田拓郎)

B6 蜃気楼 (クリスタルキング)

B7 ジャズマン (サザンオールスターズ)

 

演奏: ホメロス・レコーディング・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,200円

 

全く、復活月間直前にしてどうなっているのだ…またもミリオンセラー歌手の訃報が伝えられたではないか。そんな時に迅速に対応できる黄昏みゅうぢっくもどうかしていますが。奇しくも、前回谷村さんの追悼をした直後、カセット再生環境を思い切って一新し、その音源をリップする作業に突入したので、準備していたコンテンツの繰り上げも容易に行えるし、ある程度予備ネタもあったので、そこまで動揺せずに済んでいます。自分が歌謡曲及びニューミュージックに対して注げる情熱は、そこまでさせないと気が済まないものなので。

今回紹介するのは、1980年夏近辺のヒット曲満載の怪しいテープ。個人的にも、高校受験前の夏休みでありつつ、ふんだんに歌い騒いでた頃を思い出させる選曲なんです…と言いたいけど、正直あの夏は自分にとって「レジデンツとオールディーズの夏」だったんですよ。ヒット歌謡に対する情熱が多少冷めてた。でも、オールディーズ熱にしたって、シャネルズに引っ張られた部分は多大にあるし、レジデンツの「サード・ライヒンロール」を聴いて、ヒット曲がどのように青年の心を蝕むかというプロセスの重大さを教えられもしたわけで。そんな時期を振り返ると、「順子」もめちゃ素直に心に引っかかる。鍵盤など弾けなかった我が僚友G君が、一生懸命このイントロを繰り返し弾いている様子が、我が秘蔵テープに記録されていますから。当然ダンシング・オールナイトも、そのテープで熱唱しています(汗)。

ああ、センチな気分がぶり返す。「Yes・No」のイントロを、せこい規模ながらいい感じで再現したこのアレンジを聴いて、余計そう思う。せこい歌無歌謡でも、ベースはドヤ顔でキメようとしているし、ドラムがカッコよく鳴り響く。人工の椰子の木がそそり立つ喫茶店だって、それなりに枯れた感じを隠し通せない。自分の中でどうしても否定できないニューミュージック色を、的確にまとめたヴァージョンだ。そしてまた、「はい、いいえ」を聴きたくなる。のりのりで歌われるいなせなロコモーションのバックコーラスも、左側のサイドのはりきりに怯えつつ2番で決定的にずれを露呈してしまうRIDE ON TIMEのギターも、全てがせこい都会色に染まっていて素晴らしい。肝心の「ダンシング・オールナイト」は、エッジの効きすぎたシンセの音がかえって場末色を醸し出していてナイスだ。ここでもベースが地味に自己主張している。最早コンビニで聴けるインストヴァージョンに、この種の要素なんて期待できないもんな…リベラルなんてレーベル名から期待できない、自由な幻のかけら。こんな演奏でYMOの曲を聴きたかった。