黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その40: 追悼…ゴードン・ライトフット

タクト TS-1006

ゴーン・ザ・レインボウ/藤田正明と彼のグループ

発売: 1967年   

ジャケット

A1 朝の雨 (ゴードン・ライトフット)

A2 ミスター・タンブリン・マン (ボブ・ディラン)

A3 風に吹かれて (ボブ・ディラン)

A4 ジェリコの戦い (Trad.)

A5 母のない子 (Trad.)

A6 悲しきベイブ (ボブ・ディラン)

B1 パフ (ピーター・ポール&マリー)

B2 ミッドナイト・スペシャル (Trad.)

B3 風は激しく (イアン&シルヴィア)

B4 悲惨な戦争 (ピーター・ポール&マリー)

B5 ライク・ア・ローリング・ストーン (ボブ・ディラン)

B6 虹と共に消えた恋 (ピーター・ポール&マリー)

 

演奏: 藤田正明と彼のグループ

編曲: 無記名

定価: 1,800円

 

バカラックに続く追悼の回。まさかゴードン・ライトフットを黄昏みゅうぢっくで追悼することになるなんて…この作品、当然のように歌謡フリー火曜日のラインナップに入れていたのですが、4曲もディランの曲が取り上げられているという事実の前に、てっきり1曲目に抜擢されていたことを忘れてた…これをトップに持ってきたことは英断だったと思われますが、じんと来ますね。ご冥福をお祈りします…

というわけで、ジャックスの最初の2枚のシングルでおなじみタクト・レコードにひっそり残されたフォーク・インスト・アルバム。ジャズが主流のレーベルだけあり、異色の1枚としてあまり語られる機会もないであろう盤ですが、あっさり巡って来ました。66年あたりから盛んに出される和製フォークのインスト盤と同じ線上でまったり聴けるし、ジャズ・レーベルらしいアグレッシヴな部分もあまり見られず、いよいよ革命期を迎える日本フォーク界への助走として興味深い内容。そんな中にディランの曲が4曲も入っているのですから、気にならないわけがない。特に「ミスター・タンブリン・マン」「悲しきベイブ」は相当ロックに傾いた演奏になっていて、気が抜けたような部分もあることはあるけれど、全体の流れの中ではいいアクセント。何せ、ドラムは石川晶が叩いてるし。ジェリコの戦い」もジャズ畑で好んで取り上げられた曲だけあって、相当攻めた演奏になっているし、「パフ」あたりのまったりとした感じと好対照。この曲をはじめ、随所でオカリナがいい味を出しているのが特徴的。超低音オカリナなんて、全くと言っていいほど聴く機会ないし。演奏しているのは香山久氏。「ミッドナイト・スペシャル」CCRを予感させるノリノリのロック版だし、「母のない子」もその後のあの曲に与えた影響を予知させるアレンジだ。そして、やけくそのような「ライク・ア・ローリング・ストーン」。この曲が与えたものが日本でも重大な意味を持ち始めるのは、まだまだ先のこと…この長閑な演奏を聴きながら、我が道を行ってた時代の日本に思いを馳せるのだ。音楽的に華満開と行かないまでも、あの頃の重い空気にこそリアリティを感じたいものだ。