黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

クリスタル…純歌謡・ジャパン(違

CBSソニー SOLH-54

歌謡ワイド・スぺシャル

発売: 1974年

ジャケット

A1 ちっぽけな感傷 (山口百恵) 🅵→23/6/3

A2 追憶 (沢田研二) 🅷→23/6/3

A3 ふれあい (中村雅俊) 🅹→23/6/3

A4 渚のささやき (チェリッシュ) 🅴

A5 じゃあまたね (浅田美代子) 🅱

A6 花占い (桜田淳子) 🅱

A7 北航路 (森進一) 🅶→23/6/3

A8 美しい朝がきます (アグネス・チャン) 🅳

A9 愛ふたたび (野口五郎) 🅴

A10 想い出のセレナーデ (天地真理) 🅳→23/6/3

B1 傷だらけのローラ (西城秀樹) 🅵

B2 上級生 (フィンガー5) 🅱

B3 風のいたみ (りりィ) 🅳

B4 悲しみのシーズン (麻丘めぐみ) 🅱

B5 秋日和 (あべ静江) 🅲

B6 小さな生命 (ルネ)

B7 夏の終り (キャロル) 🅱

B8 うすなさけ (中条きよし) 🅸

B9 夜霧の街 (南沙織) 🅱→23/6/3

B10 よろしく哀愁 (郷ひろみ) 🅱→23/6/3

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: たかしまあきひこ矢野立美、名嘉元英麿

定価: 1,500円

 

今回の復活月間でも、無事我が「歌無歌謡四天王」と呼ぶところの4組のアルバムが揃い踏みしてますが、何が悔しいって、8月上旬に某オークションに出た「箱売り」を逃してしまったこと。こともあろうに、この4組のうち3組のアルバムでトップクラスに欲しいものが狙ったように含まれていて。他の盤も美味しそうなのが揃っていたので本気になろうと、強気のビッドを仕掛けていたのですが、クローズ間際まで秋にやるイベントの打ち合わせに熱中していて、その間にあっさりオーバービッドされ、負けてしまいました。本当、そこまで熱意を持っているコレクターの方がいらっしゃるんでしょうかね。当然ここも見られてるんじゃないかと推測しますが(汗)。

6月3日のエントリで触れた通り、クリスタル・サウンズにはまだまだミステリーな部分が多くて、80年代に至るまでの完全情報を補填できていません。例の箱売りにも4枚、持っていないアルバムが入っていたし。この盤の存在も、6月3日の段階ではまだ突き止めていなくて。その2枚目の収録曲のうち7曲の初出がこの盤でした。ということは、この前後にまだ存在を突き止めていない1枚もののアルバムがあるはず。注意深く追わなきゃいけませんね。

というわけでクリスタル・ヴァージョンとしては初出の13曲を軸に話していきましょうか。と言えども、安定のクリスタル節としか言えないんですが、74年春までの盤に感じられた純情色が一歩後退したというか、ちょっとハイソな感覚を打ち出し始めたなという印象。ジャケットもそんな感じだし。ハイソな印象を最も的確に現している感じの「ふれあい」に入っているリコーダーが、いかにも文学少女といった響きで、A面後半の展開に期待を抱かせるのだけど、「じゃあまたね」が高音のエレピがまさに純情そのもので、ハーモニカもうきうきした響きでその後ろを追っているのに、「わたしの宵待草」のような胸キュン感が希薄で。やっぱ、歌手と作曲者に起こったその後のことを示唆したのだろうか(まさか)。「花占い」も主旋律以外の部分でフルートが目立ち過ぎるのが、演出としてどうかなと。森進一を挟んで、「美しい朝がきます」で再びリコーダーが出て来るのだけど、こちらは牧場の朝の長閑さという感じの響きだ。寧ろいいのは「風のいたみ」に入っているオカリナ。一瞬ベンドするところがキュンキュンさせる。はちの巣の「かもめ」に通じる響きだが、当時オカリナでそこまでできた人は限られるからな…(誰とは言わない)。

「上級生」ミノルフォン盤でも演奏されていたけど、エクスペリメンタル過ぎる「恋の大予言」と票が割れたのは仕方ないところ。名曲なんですけどね。キャロルの「夏の終わり」の選曲も貴重だし、「悲しみのシーズン」秋日和も曲の良さを再認識させる好演。でも、最高傑作は無茶気味の解釈に走っている「愛ふたたび」ということにしておこう。