黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

小梅ちゃんの純情に寄り添うフルート

ミノルフォン  KC-143

‘78最新ヒット歌謡❸

発売: 1978年9月

ジャケット

A1 モンスター (ピンク・レディー) 🅳

A2 モンテカルロで乾杯 (庄野真代) 🅲

A3 ドール (太田裕美) 🅱

A4 ジョニーの子守唄 (アリス) 🅱

A5 ダーリング (沢田研二) 🅳→3/13

A6 林檎殺人事件 (郷ひろみ樹木希林) 🅲

A7 時間よ止まれ (矢沢永吉) 🅵

B1 リップスティック (桜田淳子) 🅱

B2 シンデレラ・ハネムーン (岩崎宏美) 🅱

B3 泣き上手 (野口五郎) 🅲→3/13

B4 泣きぬれてひとり旅 (小柳ルミ子)

B5 津和野ひとり (森昌子) 🅱→3/13

B6 窓ガラス (研ナオコ) 🅱

B7 あしたも小雨 (五木ひろし) 🅲→3/13

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ&ストリングス

編曲: 無記名

定価: 1,800円

 

昨年11月6日に語った通り、箱買いの中身でブルーナイト・オールスターズのアルバムが大量に迷い込んできて、そのうち4枚は従来語っていた2枚組と1曲を除きダブっているという理由で避けておいたのですが(それにしてもコンプリーティストを惑わせますよね…)、避けられなかった盤が1枚ありました。それがこれ。相変わらず小梅ちゃんシリーズの美学…といえども、これは傷みが目立つんですよね。しかも2枚あって両方とも。帯付きの盤がオークションに出た時、薬指が動きかけたんですけどね…我慢するときはしますよ…

この盤は昨年3月13日に紹介した2枚組の後に発売されており、そこから4曲を流用していますが、残る10曲が初登場。恐らく、79年12月まで歌無歌謡のリリースは途絶えていたと思われるので、これは重宝していい1枚かも。そして、気合の入った演奏が全編で聴かれるのです。のっけの「モンスター」がいきなり想像を絶する絶叫で始まり、重厚な演奏に導かれはするけれど、多少のガチさの欠如がかえって「ヴィーナス」の影響を露呈したりするのですよ。「モンスターが来たぞ!」を体現するギターも鬼気迫り、油断を許しません。続くモンテカルロで乾杯」のフルートの純情たっぷりな音もいいのだけど、これを凌ぐのが「ドール」。鍵ハモがノリノリで先導するし、ここでのフルートもめちゃいい音。2番の最初の「ドール」のとこでお茶目にウィンクするような感じとかたまりませんね。この奏者が吹くリコーダーも外さないだろうな…Bメロのバックのフルート、リズム隊に至るまでほんと素晴らしい、クラウンの「木綿のハンカチーフ」やソニーの「失恋魔術師」さえ凌ぐ、歌無太田裕美の最高峰ですよ。一方で「時間よ止まれ」は相当軽くなっていて、一部他のヴァージョンに感じるスリルが欠けている。後ろの方でうつろに鳴っているギターが悲しげだ。B面にも期待曲がいくつかあるけれど、手堅いブルーナイト・サウンド以上の印象はなし。オリジナルのオケを使用した2曲にも負けていないフルートの活躍には拍手を送りたいところ。

このジャケットで「LOVE (抱きしめたい)」の収録に間に合わなかったのは惜しかった、といったところ。さて、未だ持っていない小梅ちゃんジャケが最低2枚あるのですけど、たとえ曲被りまくりだろうがなんとかしないと…