黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その43: タカシです…(爆

テイチク BL-1003

ニュー・スクリーン・テーマ・ベスト10 幸せはパリで

発売: 1970年

ジャケット

A1 幸せはパリで (バート・バカラック)

A2 雨の訪問者 (フランシス・レイ) 🅱

A3 雨にぬれても (B.J.トーマス) 🅵

A4 ひまわり (ヘンリー・マンシーニ) 

A5 Zのテーマ (ミキス・テオドラキス) 🅱

B1 ハロー・グッドバイ (フランシス・レイ)

B2 赤いテント (アレクサンドル・ザツェーピン)

B3 さらば夏の日 (フランシス・レイ)

B4 ガラスの部屋 (ペピーノ・ガリアルディ)

B5 狼の挽歌 (エンニオ・モリコーネ)

 

演奏: ワールド・スクリーン・オーケストラ

編曲: 山倉たかし

定価: 1,000円

 

テイチクの10曲(時に12曲)入り「BEST and BEST」シリーズは、見つけるとついつい手を出さずにいられなくなる。知る限りだと全部で53枚発売されてるはずなのだが、同じテイチクの「LOVER CREATION」シリーズみたいに、訳もなく崇められている盤があるわけでもなし。とにかく、スピーディにトレンディな曲を届けるというコンセプトの暴発が、今振り返るととても愛しい。「ブルー・ロック・ファイブ」みたいにとんでもない逸品が隠れてたりするから余計。ジャケット制作における一貫したポリシーが、また手を出す欲をたまらなくそそる。

これは70年当時の最新洋画関係ヒット曲を集めたもので、サントラ盤に拘らないライトな購買層には大いに訴えたはず。権利関係的にも今より遥かに緩かったのか、映画のスチールをジャケットに使うのにそこまでややこしい手順を踏む必要がなかったのだろうか。それに加えて、個人的には「山倉たかし」の5文字で買いだ。というかこのシリーズの場合、買ってからそのクレジットを確かめて狂喜するというパターン。2枚組とかだとさすがに躊躇うけど(汗)。彼らしいマジカルなオーケストレーションが楽しめまくるが、「雨にぬれても」がどうにも消化不良な感じがして…うきうきするニュアンスが伝わってくるアレンジなのだけど、メロディーのこなし方がどうしても曲に勝ててないという印象。オリジナルのシングルを当時出してたのもテイチクだったから、遠慮したのかもしれないな…これの次にマサ子さんの「雨にヌレテモいーや」をDJで流したりしたら、それはそれで楽しそうだが(瀧汗)。

「Zのテーマ」のような攻めに攻めた演奏もあるし、それを挟むロマンティックな展開にうっとりするのだけど、どうしても9曲目で表情が崩れてしまう。あのイントロも当然健在だし、場末感を強調したアレンジで余計哀感が醸し出され、たった一人の芸人がいかに曲の運命を変えてしまうかを、インスト・ヴァージョンを聴いてさえ痛感する結果になってしまうのである…最後の「狼の挽歌」はサイケ感全開で、正に「LOVER CREATION」番外編という感じのサウンド。よろめきながらも山倉マジックに酔える1枚。このシリーズ、今月はまだまだ続きますよ…