テイチク SL-1290
テナー・サックスによる 天使のスキャット
発売: 1969年10月
A2 フランシーヌの場合 (新谷のり子) 🅵→3/26
A3 愛して愛して (伊東ゆかり) 🅼
A4 山羊にひかれて (カルメン・マキ) 🅹
A5 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🆆
A6 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 🅿︎
B1 禁じられた恋 (森山良子) 🆄
B2 おんな (森進一) 🅹
B4 恋の奴隷 (奥村チヨ) 🅻
B6 雲にのりたい (黛ジュン) 🅻
演奏: 松浦ヤスノブ、テイチク・ニュー・サウンズ・オーケストラ
編曲: 山倉たかし
定価: 1,500円
一週間、ほぼ「テイチク祭り」が続きましたが、これでおしまいじゃありませんよ…今日お届けするのは、内容としては手堅い方のアルバム。ほぼ全ての曲、10ヴァージョン以上ここに登場しているし…と言えども、山倉たかし編曲と言われると黙っちゃいられません。ジャケットもいい感じで誘惑しているし、斬新なフォトショマジック(なわけない)。タイトルの題字も見事ですよね。昨日の「夕月」もそうでしたが。
冒頭の2曲は『コンピューターが選んだ~』で既に紹介済みですが、「天使のスキャット」の夢心地ぶりは改めて聴くと染みますね。通俗的テナーの王者、松浦ヤスノブのプレイがここまで、この桃源郷サウンドに調和するとは。「フランシーヌの場合」も、珍しくフランス語部分のニュアンスを見事にインスト化していて、この非情なる世界への嘆きをさらに加速させるのです。この後続く常連曲にも、山倉サウンドの基本がしっかり生きていて油断できません。「禁じられた恋」も正攻法で来るかと思いきや、まさかの意表をついた仕掛けをそこここにかましてくるし。選曲的にかなり被っているノーチェ・クバーナの『恋の奴隷』が危ない世界に手招きしてくれるのと対照的な一方で、同じ山倉仕事の『魅惑のギター二重奏』とも全く違うカラーを提示してくるし。曲の良さを生かしながら、自らの個性を刻印して崇高な世界へと誘ってくれる山倉サウンドの真髄。夜の匂いだけじゃないのですよ、テナー・サックスが醸し出すのは。