黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

横浜で彼の車に乗って神戸に着いた(爆

テイチク BL-1053

ニュー・ヒット歌謡ベスト10 長崎から船に乗って

発売: 1971年10月

ジャケット

A1 愛の巡礼 (藤圭子) 🅳

A2 真夏の出来事 (平山三紀) 🅲

A3 太陽のかけら (美樹克彦) 🅱

A4 さすらいのギター (小山ルミ) 🅶

A5 その名はふるさと (平浩二)

B1 長崎から船に乗って (五木ひろし) 🅼

B2 恋おんな (かずみあい)

B3 希望をあたえて (菅原洋一)

B4 港の別れ唄 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅵

B5 さよならをもう一度 (尾崎紀世彦) 🅾

 

演奏: テイチク・オールスターズ・オーケストラ

編曲: (付属品紛失につき未調査)

定価: 1,000円

 

一日挟んで、またまた「BEST and BEST」シリーズより。乙女マインド・ゲームスという感じのジャケットがこのシリーズらしく爽快ですが、調査メモに「このシリーズはこれで打ち止め」と書いてあって、どうやらこれがまじで最終作のよう。歌詞カードが紛失しており、誰のアレンジかもわからないが、とにかく針を落としてみよう。おお、イントロから「あの声」!例の「LOVER CREATION」の1枚、『ヒット歌謡エクスプレス/お祭りの夜』で初出となったあの「長崎慕情」で歌っていたシンガーのそれだ。ただ、ここでのフレージングはより高い声でオペラティックな歌唱になっており、別の人の可能性も。ともあれ、このシンガーの素性を確かめるべく、別のレコードに手がかりがあるかもと入手してみたら、肩透かしを食らってしまったと。この話は数日後に改めてしますね。何せ、今回テイチクのネタが劇的に増加したので…

この「愛の巡礼」、イントロだけでお腹いっぱいになりそうと聴いていたら、1オクターブ下の音をオクタヴィア(?)で補強したサックスに続いて、例の巻き舌尺八!100%村岡実!その脇を固める琴と三味線。当然あの面子でしょう。そう、これだけの要素が揃って、はずれなわけがありません。となると、アレンジは当然竹田喬ということになるはず。地味なオープニング曲にここまで美味しい要素を盛ってくれるなんて、もう傑作の座は約束されているようなものです。最後のサックスの重低音(当然加工した方)に女声が絡むところとか、正に芸術的。その余韻に酔っていたら、きました「真夏の出来事」!この大大大名曲になんてことをしてくれる、なんて言いません。まじで最高傑作。ちょっとテンポ落とし気味のイントロに絡む琴の万華鏡的な響き。もう、山内節全開でとろけそう。その後の尺八の響きもリコーダー的でまじ萌え。ビリー・ヴォーン直系のブラスに、地味ながらエレクトロ感を醸し出すオルガン。1コーラスの最後で尺八がこけかけるけど、当然許します。これをフル演奏したら当然5分越えそうだけど、3分17秒で抑えている。最後、フェイドアウトせずイントロ最後のフレーズを持ってきて、そこに尺八が舞い上がってくるところとか、まじで泣けます。最高すぎ。

次、「希望」かと思ったら「太陽のかけら」これも尺八が絶叫し、大正琴が彩を加えるが、Bメロで突然叫びだすトランペットが地味に過激。こういうのがあるから竹田喬アレンジは凄いんです。「さすらいのギター」は和風色合いを控えめにしたラテンロック、ながら尺八とヴァイオリンという取り合わせがシュール。A面ラスト「その名はふるさと」は地味に自社推し、ながら筒美京平作品。京琴と尺八が絡んでジャパネスク。これが「セクシー・バス・ストップ」の伏線となったか?「長崎から船に乗って」は昨日の「ダブル・ドラム」の消化不良を解消してくれるかなと思ったが、サックスのフレージングが面白さを匂わせながらそれほどでも。「恋おんな」はレア選曲ながら、大正琴とオクタヴィア(?)サックスで手堅く。「希望をあたえて」はこの選曲の中では安息の場所だろう。そのまま、最後の曲までこのペースで。これら3曲は竹田喬アレンジでない可能性もある。といえども、この人の名前があるテイチク盤は絶対外さないと確信に至った1枚。あとはなんとかして『お祭りの夜』をリーズナブルな価格で手に入れたいところ…