黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

誰も知らない素顔の…

テイチク SL-1502

Hit Action 1500 八代亜紀ヒット歌謡メロディー

発売: 1978年

ジャケット

A1 愛の條件 (八代亜紀)Ⓐ 🅱

A2 おんな港町 (八代亜紀)Ⓑ 🅶

A3 貴方に尽くします (八代亜紀)Ⓒ 🅶

A4 ふたりづれ (八代亜紀)Ⓐ 🅶

A5 おんなの夢 (八代亜紀)Ⓓ 🅷

A6 水仙 (八代亜紀)Ⓔ 🅸

A7 ともしび (八代亜紀)Ⓕ 🅵

A8 愛ひとすじ (八代亜紀)Ⓖ 🅹

A9 女ごころ (八代亜紀)Ⓖ 🅳

A10 愛の終着駅 (八代亜紀)Ⓐ 🅶

B1 もう一度逢いたい (八代亜紀)Ⓗ 🅶

B2 恋歌 (八代亜紀)Ⓐ 🅴

B3 おんなの涙 (八代亜紀)Ⓖ 🅵

B4 しのび恋 (八代亜紀)Ⓖ 🅸

B5 船は行く (八代亜紀)Ⓘ

B6 さよなら故郷 (八代亜紀)Ⓙ

B7 未練恋 (八代亜紀)Ⓔ

B8 夢魔のブルース (八代亜紀)Ⓚ 🅱

B9 みなとの女 (八代亜紀)Ⓗ

B10 なみだ恋 (八代亜紀)Ⓖ 🅾

 

演奏: 坂田宏聡 (尺八)、山内喜美子 (琴)/テイチク・オーケストラⒶⒷ

カンノ・トオルとオーケストラⒸ

テイチク・オーケストラⒹⒺⒻⒾ

あかぎ哲也とオールスターズⒼ

坂田宏聡 (尺八)/テイチク・オーケストラⒽⒿⓀ

編曲: 池多孝春Ⓐ、伊藤雪彦ⒷⒸⒺⒿ、馬場良Ⓓ、竜崎幸路ⒻⒽ、あかぎ哲也Ⓖ、高田弘Ⓘ、小谷充Ⓚ

定価: 1,500円

 

八代亜紀の曲のインスト盤は、竜崎孝路によるシンセサイザーサウンドのアルバムを先に紹介したので、これが2度目の登場。と言えども、これを語りたくなったきっかけは、八代亜紀だからではない。

74年に創刊された双桑社のグラビア雑誌「Mr. Action」とのタイアップで78年、テイチクから14枚のインスト・アルバムがリリースされた。その中の1枚『日本の詩情/美しき日本の旋律』を「歌謡フリー火曜日」用のネタとして準備していて、内容そのものはコロムビアの同系統の盤なんかに比べるといまいち面白味に欠けるので保留していたのだが、その耽美的なジャケット写真に「これでいいのか」という感想しか抱けず、シリーズ展開の背景に興味を抱いた。ネット上で見かけた『日本軍歌名曲集』のジャケットはさらに過激で、ゼロ戦としか思えないイメージイラストも載せられているし、一体なんなんだこのシリーズ。深く探索しているうちに、この八代亜紀作品集の情報が出てきて、「帯付き」で売りに出されているということで、買うしかなくなった。以下、そこから得た情報を書き綴ります。歌無歌謡を語る際、こういった検証も絶対大事だと思うし。

78年に一挙発売されたこれら14枚のいずれか(複数枚ではなく)をお買い上げになった方が応募券を貼って応募すると、特別編集されたグラビア特集号が当たるというキャンペーンが打たれていたのである。故に、応募券が切り取られていない帯付き盤が中古市場に姿を表すことはまずないし、そもそもこれらのアルバムを買ってグラビア特集号を当てたという動きが想像し辛い。ましてや唱歌とか軍歌とか、田端義夫ヒットメロディーとか、フレッシュガールに癒しを求める層と重なるのか。昭和53年でさえもですよ。まぁ、自分が当時この雑誌に親しめる世代じゃなかったから、このキャンペーンが想定外に感じられるのは当然のことですけど。となると、当時既にトラッカーのアイドルだった八代亜紀ならば、納得するしかないでしょう。それにしても、「スター・ウォーズ」が収録された『最新映画音楽ベスト20』とか、「チャイニーズ・カンフー」が収録された『ベスト・オブ・ダイナミック・ドラム・サウンズ』は気になります。で、ゼロ戦としか思えないイラストは、唱歌の盤にもあしらわれていたので、シリーズ全体のイメージアイコンなのでしょう。この八代亜紀盤には、その代わりに気球のイラストがあしらわれています(帯で隠れてる)。

で、内容の方は、「愛していません」などのタイアップ・準レギュラーシングルを除く彼女のそれまでのヒット曲が網羅されている。後半の方に馴染みのない曲名が出てくるが、わずかに「未練恋」がシングルB面から選ばれており、他はイレギュラーなシングルやアルバムから、ファンの間で人気の曲をセレクト。ちなみにこの盤の後で出た新曲が谷村新司作品「哀歌」だった。びっくりするのは、多くの曲がオリジナルのオケを使用した純粋インストヴァージョンであること。「愛の條件」で聴けるおしとやかな山内さんの琴とか、全くバランスが崩れることなくはまっていて見事。一方、あかぎ哲也とオールスターズ名義の曲は、74年あたりのオーセンティックな録音をそのまま使っているようで、場末感溢れるサウンドだ。それにしても「花水仙、オリジナルのオケに乗った尺八の調べが純真すぎて、そこに絡んでくる女性コーラス…泣ける。東芝の山内ヴァージョンでこの曲の良さを再発見したけれど、こちらも格別です。このアルバムのジャケットにこんなおしゃれな、無害なお姉さん(汗)を持ってくるのも罪作りですな。