黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

いいえ私は…クラウンレコードの女

クラウン  GW-5248

春のおとずれ・劇場 ビッグ・ヒット歌謡ベスト18

発売: 1973年3月

ジャケット

A1 春のおとずれ (小柳ルミ子)Ⓓ 🅸

A2 おきざりにした悲しみは (吉田拓郎)Ⓒ 🅰→21/6/21

A3 劇場 (ちあきなおみ)Ⓓ 🅹

A4 ひなげしの花 (アグネス・チャン)Ⓑ 🅳

A5 女のねがい (宮史郎とぴんからトリオ)Ⓐ 🅻

A6 愛への出発 (郷ひろみ)Ⓓ 🅷

A7 中学三年生 (森昌子)Ⓒ 🅸

A8 早春の港 (南沙織)Ⓐ 🅸

A9 さそり座の女 (美川憲一)Ⓒ

B1 学生街の喫茶店 (ガロ)Ⓒ 🅱→21/6/18

B2 若草の髪かざり (チェリッシュ)Ⓓ 🅶

B3 女の子なんだもん (麻丘めぐみ)Ⓐ 🅷

B4 あなたへの愛 (沢田研二)Ⓒ 🅵

B5 愛の挽歌 (つなき&みどり)Ⓐ 🅱

B6 冬物語 (フォー・クローバーズ)Ⓒ 🅳

B7 ふたりの日曜日 (天地真理)Ⓑ 🅷

B8 怨み節 (梶芽衣子)Ⓐ 🅷

B9 しのび逢い (尾崎紀世彦)Ⓒ 🅶

 

演奏: まぶち・ゆうじろう ’68オールスターズⒶ

いとう敏郎と’68オールスターズⒷ

ありたしんたろうとニュービートⒸ

栗林稔と彼のグループⒹ

編曲: 福山峯夫ⒶⒷⒹ/水上卓也Ⓒ

定価: 1,500円

 

またクラウンのネタか…テイチクと違って、盤またがりを探すだけでも萎えるな…と思いつつ調べてみたら、既に語った盤とのダブりは2曲のみ。救われた…と言いつつ、いつものクラウンの詰め合わせで安心して聴けるとしか言えない予感。例によって「君と」抜きの「学生街の喫茶店はなんと5枚目の登場だし。その一方で、さそり座の女は今の今まで登場していなかったのが意外。と言っても、発売当時の最高順位は23位と、他社に取り上げられるほどのジャイアントヒットでもなかったし。ただ、曲そのものの生命力が驚異的だったんですよね。ついこの間も、美川憲一中心のプレイリストを肴に某所で盛り上がったのですけど、この曲は知らない人いなかったですね。あと、リアルタイムでは完璧にスリーパーだった「スカーレット・ドリーマー」の生き返り力も凄いなと。さすがにこれや「ローリング・ストーンズは来なかった」は、クラウン自社でさえもインスト化してませんでしたね。

いつもの3種盛りに栗林稔のピアノが芳醇な香りを添えている1枚だが、聴き進めると、やはり引き込まれずにいられない。まぶちゆうじろう’68オールスターズ名義になっている曲も、普段以上にありたテイストを強めており、特に「女のねがい」はまったり演ってるなと思って聴いていたら、2番でいきなりニュービートモードになって唖然。「中学三年生」はワーナーの「太陽にほえろ!」ヴァージョンの印象が強すぎるけれど、熱さという点ではこちらも負けていない。ジャケットにもなんとなくワーナー色を感じるので、ついついビートニックスのレコードかと錯覚してしまいそう。「早春の港」も豪快にアタックしているし、件の「さそり座の女」もニューロック仕立て。「怨み節」は奇遇でしかなさそうだが、ポリドール盤と同じように3コーラス目でロック化してしまう。あっちのように転調まではしていないけれど。やっぱ考えることって似てしまうんでしょうね。

いとう敏郎単独名義の2曲が、まったりしすぎて浮いている印象。多分これを指摘した人はいないと思うのだけど、いとう敏郎の中の人ってクラウンのアレンジャーの井上忠也氏じゃないかという気がするのですよね…イニシャルが一致するし。