黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

カート没後30年にて、ティーンスピリットに想いを馳せる

CBSソニー 18AH-229

最新歌謡ベスト18

発売: 1977年

ジャケット

A1 イミテイション・ゴールド (山口百恵)Ⓐ 🅰→21/8/28

A2 帰らない (清水健太郎)Ⓐ 🅱→21/8/28

A3 風の街 (ハイ・ファイ・セット)Ⓑ 

A4 沈黙 (野口五郎)Ⓐ 🅳

A5 恋愛遊戯 (太田裕美)Ⓑ 🅱

A6 カルメン'77 (ピンク・レディー)Ⓒ 🅲→21/8/28

A7 五月のバラ (塚田三喜夫)Ⓒ

A8 悲恋白書 (岩崎宏美)Ⓐ 🅳

A9 能登半島 (石川さゆり)Ⓒ 🅵

B1 渚のシンドバッド (ピンク・レディー)Ⓐ 🅱→21/8/28

B2 気まぐれヴィーナス (桜田淳子)Ⓑ 🅲

B3 雨やどり (さだまさし)Ⓑ 🅰→21/8/28

B4 失恋レストラン (清水健太郎)Ⓒ 🅴

B5 暑中お見舞い申し上げます (キャンディーズ)Ⓐ 🅰→21/8/28

B6 硝子坂 (高田みづえ)Ⓐ 🅰→21/8/28

B7 夢先案内人 (山口百恵)Ⓒ 🅱→21/8/28

B8 悲しきメモリー (郷ひろみ)Ⓐ

B9 ひとり芝居 (布施明)Ⓒ 🅱

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 矢野立美Ⓐ、武市昌久Ⓑ、松井忠重Ⓒ

定価: 1,800円

 

ポーリュシカ・ポーレ」や「知床旅情」が素直に聴けない曲になってしまったのと全く別の理由で、今積極的に言及すべきじゃない曲となってしまった能登半島。寧ろ、聴いて応援とか歌って応援したい気持はあるのだけど、それを表にしただけで、対立感情を持つ者が湧いてくる危険性があるのだ。全く、こんな時代に誰がしたのだ。歌謡界は平和であって当然じゃないのか…と言いたいけれど、この盤が登場した昭和52年の芸能界こそ、ピースフルと程遠い世界だったし、そんな要素を後々まで引きずった歌手の曲が、ここには2曲も含まれているではないか…もう一人、素直に口にできない歌手名も含まれているし。

「歌のない歌謡曲」は、一切そんなことを考えずに聴けばいいものである。歌手もいないし、歌詞もない。ただ、いい演奏さえあれば曲の魅力が伝わってくるし、素材として上出来な曲ばかりである。そんな曲に恵まれた時代が羨ましいとしか言えない。そんなわけで、たまには「津軽海峡冬景色」や「天城越え」ではない曲を、紅白で歌ってくださいよ石川さゆりさん。

というわけで、1977年夏の無邪気な記憶を蘇らせてくれるクリスタル・サウンズのアルバム。この時期のリリースに関する詳細を調べることがどうしてもできなくて、出てくるだけで有難かったので。多くの曲をクラウンやミノルフォンのヴァージョンで聴いてはいるけれど、このクリスタルな軽さに接するとホッとするし、やはり安心のブランドですね。既に取り上げた総集編2枚組に再利用されなかった曲では、まずシティポップ色に彩られた「風の街」に耳が留まる。クラウン盤のライトな感じに比べて、慎重に綴られている「恋愛遊戯」「悲恋白書」も、曲のフレッシュさが伝わりやすいし、最後2曲で際立つフルートとピッコロのオクターブユニゾンが、このアルバムの若々しさを象徴する音になっているようだ。「暑中お見舞い申し上げます」にも、合いの手のコーラスに呼応した音として出てくるのだけど、「うーっふーん」に該当する音がないのが惜しい。そこはスライドホイッスルを使えばいいのに…あと、スチール・ギターに代わる音がシタールっぽいのも面白い。「硝子坂」「夢先案内人」のフルートもフレッシュな音だけど、後者の方はやっぱクラウン盤の圧勝かな。

さて、これに先立つクリスタルの77年必殺盤もようやく手に入ったけれど、そちらは次の復活戦まで隠しておきます…以前2時間自動延長して競り負けたのは一体何だったのだろう…