黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

これを持ってない者に歌無歌謡を…なんて言わないで

コロムビア ALS-4297

ゴールデン・ヒット・メロディ (第3集)

発売: 1967年12月

ジャケット

A1 真赤な太陽 (美空ひばり) 🅱

A2 夕笛 (舟木一夫)☆

A3 マリアの泉 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)☆ 🅲

A4 小指の思い出 (伊東ゆかり) 🅲

A5 霧のかなたに (黛ジュン) 🅱

A6 知りたくないの (菅原洋一)☆ 🅲

A7 風が泣いている (ザ・スパイダース)☆

A8 ほれているのに (島倉千代子)

B1 バラ色の雲 (ヴィレッジ・シンガーズ) 🅲

B2 愛は惜しみなく (園まり)☆

B3 いとしのマックス (荒木一郎)☆

B4 恋 (布施明) 🅱

B5 たそがれの赤い月 (ジュディ・オング) 🅱

B6 カスバの女 (竹越ひろ子、他)

B7 渚のセニョリーナ (梓みちよ)☆ 🅱

B8 北国の青い空 (奥村チヨ)☆ 🅲

 

演奏: ゴールデン・スターズ

編曲: くるみ敏弘、大西修(☆)

定価: 1,500円

 

歌無歌謡屈指のナイスジャケット。67年当時はそのスタイルで日本に紹介されていなかった、ビートルズのファースト・アルバムを彷彿とさせますが、どこに帯を置いても3人の乙女に失礼な感じになっちゃいますね。真ん中の娘が着ている服が最高なのにね。

もう夏は遠くに行ってしまったみたいなイメージが漂ってくるけれど、選曲自体はサマー・オブ・ラブの雰囲気が満載。いよいよ日本もポップス革命に向けて動き出したかみたいな印象が、まったりした音作りの隙間から漂ってきます。顔のないアンサンブルというイメージがあるけれど、ここには高野譲二、秋本薫、道志郎、横内章次といった錚々たるメンツが集結していて、歌無歌謡の黄金律を体現。とにかく躍動感が半端ない。場末ムードの外に出てない感じはあるけれど、ポップスの新しい流れに食いついていこうという気迫がある。だからこそ、ジャケットに見合ったファッションミュージックと言う印象もついてくるわけで。やっとレコード会社専属制度という、ある意味では国境みたいなものを越えた喜びが伝わってくる。「真赤な太陽」も、決してブルコメに負けてはいないし、自社の財産を慎重に守ろうという気合が感じられるし、「夕笛」にもなぜかポップな印象が。このライナーで触れられているカバー満載の舟木一夫のLPこそ、「歌入り歌無歌謡」の走りみたいなものだろうか。その後、黛ジュンの曲に何食わぬ顔で触れているのも、不思議な因縁を感じさせるが。「小指の思い出」の盛り場ムードも違和感なく、この流れに溶け込んでいる。一方では「ほれているのに」でファニーなムードが炸裂。この曲にまで、ポップな感触を投げ込んでいるのだ。こんな風に、正に嵐の前触れという感じで進行していくけれど、遂に初登場となる「いとしのマックス」は、やはり松本浩がやったビクター盤の印象が強烈すぎるんですよね。解る人には解るネタですが。こっちはよりスピーディに攻めている感じで、捨て難くはありますが。